相続した実家が売れない原因とは?早期売却を実現する5つの対処法

親から相続した実家がなかなか売れず、頭を抱えていませんか。維持費や固定資産税の負担だけが重くのしかかり、どうすれば良いのか途方に暮れている方も多いかもしれません。思い出の詰まった家だからこそ、手放す決断はつらいものですが、放置し続けるとさらに大きな問題に発展する可能性があります。

この記事では、相続した実家が売れない代表的な原因から、放置するリスク、そして早期売却を実現するための具体的な対処法までを詳しく解説します。税金の特例や必要な手続きについても網羅しているため、読み終える頃には、ご自身の状況に合った最適な解決策を見つけ、次の一歩を踏み出せるはずです。

目次

相続した実家が売れない代表的な5つの原因

相続した実家が長期間売れないのには、必ず理由があります。物件そのものの状態や立地条件といった物理的な問題から、相続人間の意見の不一致や法的な手続きの不備まで、原因は多岐にわたります。まずは冷静に現状を分析し、何が売却の障壁になっているのかを突き止めることが解決への第一歩です。

特に3ヶ月以上買い手が見つからない場合は、何かしらの対策が必要です。ここでは、実家が売れないケースでよく見られる5つの代表的な原因を掘り下げていきます。ご自身の状況と照らし合わせながら、売却が進まない根本原因を特定しましょう。

築年数が古く買い手がつかない

実家が売れない最も一般的な原因の一つが、建物の古さです。築年数が経過した家は、耐震性への不安や設備の老朽化が懸念され、購入希望者から敬遠されがちです。特に昭和56年の旧耐震基準で建てられた物件は、住宅ローン控除の対象外となるケースも多く、買い手の選択肢から外れやすくなります。

また、買主は購入後にリフォームやリノベーションが必要になることを見越しており、その分の費用負担を嫌う傾向があります。見た目の印象も悪くなりがちで、内覧に繋がっても契約まで至らないことが多いため、何らかの対策が不可欠と言えるでしょう。

田舎など立地が悪く需要が見込めない

物件の立地条件も、売却の成否を大きく左右する重要な要素です。交通の便が悪い、スーパーや病院などの生活施設が遠いといった「田舎」の物件は、そもそも購入希望者の数が限られてしまいます。都市部への人口流出が進む地域では、住宅需要そのものが低く、買い手を見つけるのは容易ではありません。

さらに、接道義務を満たしていない「再建築不可物件」である場合、建て替えができないため資産価値が著しく低くなります。このような物件は買主が住宅ローンを組むのが難しく、売却のハードルが非常に高くなるのが実情です。

兄弟間の共有名義で話がまとまらない

不動産を兄弟姉妹など複数の相続人で共有名義にしている場合、売却には共有者全員の同意が必要です。しかし、各々の経済状況や実家への思い入れが異なるため、「売りたい」「住みたい」「まだ売りたくない」といったように意見がまとまらないケースは少なくありません。

特に売却価格や代金の分配方法で揉めると、話が平行線のまま時間だけが過ぎてしまいます。一人でも反対者がいれば売却手続きを進めることはできず、これが売却の大きな障害となります。

相続登記が未完了で売却できない

意外と見落としがちなのが、不動産の名義変更手続きである「相続登記」です。親が亡くなった後も、実家の名義が親のままになっていると、法的には所有者が確定していない状態となり、売却活動を行うことができません。不動産を売却できるのは、登記簿上の所有者だけです。

売却を決めたら、まず遺産分割協議で誰が相続するのかを決め、その内容に基づいて法務局で名義変更の手続きを完了させる必要があります。相続登記は2024年4月から義務化されており、この手続きを怠ると売却のスタートラインにすら立てません。

思い出補正で適正な価格設定ができない

長年暮らした実家には、家族とのたくさんの思い出が詰まっています。そのため、「安く売りたくない」という感情的な理由から、周辺の相場よりも高い価格を設定してしまうことがあります。この「思い出補正」が、売却を妨げる心理的な要因になることは珍しくありません。

しかし、不動産市場は需要と供給で価格が決まるため、売主の希望価格と買主の評価が一致しなければ売買は成立しません。客観的な市場価格とかけ離れた設定では、内覧の問い合わせすら入らず、売れ残ってしまう原因になります。

売れない実家を放置する3つの大きなリスク

売れないからといって相続した実家をそのまま放置してしまうと、時間ととも状況は悪化の一途をたどります。金銭的な負担が増え続けるだけでなく、資産価値が下がり、最悪の場合は法的なペナルティを科される可能性さえあります。問題を先送りにすることは、何の解決にもなりません。

ここでは、売れない実家を放置することで生じる3つの大きなリスクについて具体的に解説します。これらのリスクを正しく理解し、手遅れになる前に行動を起こすことの重要性を認識してください。

固定資産税などの維持費がかかり続ける

空き家であっても、所有している限りは毎年「固定資産税」と「都市計画税」が課税されます。誰も住んでいなくても、不動産を所有しているというだけで発生するコストであり、売却が完了するまでこの負担は続きます。税金以外にも、火災保険料や庭の手入れ、最低限の修繕費なども必要です。

これらの維持費は、年間で数十万円にのぼることも珍しくありません。売れない期間が長引くほど、経済的な負担は雪だるま式に増えていくため、早期の対策が不可欠です。

家の老朽化が進み資産価値が下がる

人が住まなくなった家は、驚くほど速いスピードで老朽化が進みます。定期的な換気がされないため湿気がこもり、カビやシロアリが発生しやすくなります。また、雨漏りや外壁のひび割れといった不具合に気づくのが遅れ、建物の傷みが深刻化してしまうことも少なくありません。

老朽化が進めば進むほど、家の資産価値はどんどん下がっていきます。いざ売却しようとした時には、修繕に多額の費用がかかったり、解体せざるを得なくなったりと、さらに不利な状況に陥ってしまいます。

特定空き家に指定され税金が上がる

管理不全な状態で空き家を放置し続け、倒壊の危険性や衛生上の問題があると判断されると、自治体から「特定空家」に指定される可能性があります。特定空家に指定されると、住宅用地の特例が適用されなくなり、固定資産税が最大で6倍に跳ね上がることがあります。

さらに、自治体からの改善命令に従わない場合、行政代執行によって強制的に家が解体され、その費用が所有者に請求されることもあります。「特定空家」への指定は、金銭的にも精神的にも非常に大きな負担となる最悪のシナリオです。

相続した実家を早期売却する5つの対処法

売れない原因と放置するリスクを理解したら、次はいよいよ具体的な行動に移す段階です。売却を成功させるためには、多角的な視点からアプローチすることが重要になります。価格の見直しといった基本的な対策から、専門家の力を借りたり、売却方法そのものを変えたりすることも有効です。

ここでは、行き詰まった状況を打開し、相続した実家を早期に売却するための5つの対処法をご紹介します。ご自身の状況に最も適した方法を見つけ、積極的に検討してみてください。

相続不動産に強い不動産会社に相談する

相続した不動産の売却は、税金や法律など専門的な知識が絡むため、通常の不動産売買よりも複雑です。そのため、一般的な不動産会社よりも、相続案件の取り扱い実績が豊富な会社に相談することをおすすめします。相続に強い会社なら、特有の問題にも的確に対応してくれます。

彼らは税理士や司法書士といった専門家との連携もスムーズで、売却だけでなく相続手続き全般について頼りになります。最適な販売戦略を提案してもらえるだけでなく、税金の特例活用など有利な売却に繋がるアドバイスも期待できるでしょう。

売り出し価格を周辺相場まで見直す

3ヶ月から半年以上、内覧の申し込みがない場合、設定している売り出し価格が市場の相場と乖離している可能性が高いです。不動産会社に依頼して、周辺エリアの類似物件の成約価格や現在の販売状況を再調査してもらい、客観的なデータに基づいて価格を見直しましょう。

思い出の家を安売りしたくない気持ちは分かりますが、売れなければ資産価値は下がる一方です。思い切って1割程度の値下げをするだけでも、購入希望者の反応が大きく変わることがあります。

古家を解体し更地として売却する

建物の老朽化が激しく、リフォームにも多額の費用がかかるような場合は、いっそのこと家を解体して「更地」として売却する方法も有効です。買主にとっては、建物の状態を気にする必要がなく、自由に新築を計画できるというメリットがあります。

解体費用はかかりますが、古家付きのままでは売れない物件でも、土地としてなら需要が見込めるケースは少なくありません。特に立地が良い場所であれば、更地にすることで売却の可能性が格段に高まります。

すぐに現金化できる不動産買取を検討する

とにかく早く、確実に実家を手放したいという場合には、「不動産買取」が有力な選択肢となります。これは、一般の買主を探す「仲介」とは異なり、不動産会社が直接物件を買い取ってくれる方法です。買主を探す手間がないため、最短で数週間程度で現金化が可能です。

売却価格は市場価格の7〜8割程度になるのが一般的ですが、仲介手数料が不要で、契約不適合責任が免除されるメリットもあります。いつ売れるか分からないという精神的なストレスから解放されたい方には最適な方法と言えるでしょう。

空き家バンクに登録し買主を探す

特に地方や郊外の物件で、通常の不動産市場では買い手が見つかりにくい場合、自治体が運営する「空き家バンク」への登録を検討してみましょう。空き家バンクは、その地域への移住希望者や、古民家を探している人など、特定のニーズを持つ買主とマッチングする機会を提供してくれます。

登録は無料または安価でできる場合が多く、思わぬ買い手が見つかる可能性があります。不動産会社の仲介と並行して登録することも可能なので、売却のチャンスを広げるための一つの手段として活用する価値は十分にあります。

実家の売却前に必要な相続手続きと流れ

相続した実家を実際に売却するためには、法的に定められた手続きを正しい順序で進める必要があります。特に相続人が複数いる場合は、全員の協力が不可欠です。手続きに不備があると、売却活動そのものがストップしてしまうため、一つひとつ着実にクリアしていきましょう。

ここでは、不動産会社に売却を依頼する前に、必ず済ませておかなければならない相続手続きの基本的な流れを4つのステップで解説します。この流れを把握しておくことで、スムーズな売却準備が可能になります。

まずは相続人全員の同意を得る

売却プロセスを開始するにあたり、最も重要かつ最初のステップが、相続人全員の合意形成です。法定相続人の中に一人でも売却に反対する人がいれば、法的に売却を進めることはできません。売却の意思だけでなく、希望する価格や時期についても、事前にしっかりと話し合いましょう。

この段階で意見がまとまらないと、後々大きなトラブルに発展する可能性があります。全員が納得できる着地点を見つけるために、時間をかけてでも誠実に対話することが不可欠です。

遺産分割協議書を作成し署名捺印する

相続人全員の合意が得られたら、その内容を「遺産分割協議書」という書面にまとめます。誰がどの遺産をどれくらいの割合で相続するのかを明記し、相続人全員が署名し、実印を押印します。この書類は、後の相続登記の際に必要となる法的に重要な文書です。

作成にあたっては、財産の記載漏れなどがないよう注意が必要です。後々のトラブルを避けるためにも、協議内容は正確かつ明確に記載し、全員分の印鑑証明書を添付して保管しておきましょう。

法務局で不動産の相続登記を申請する

遺産分割協議書が完成したら、次に行うのが不動産の名義変更、すなわち「相続登記」です。法務局に必要書類を提出し、亡くなった親から不動産を相続した人の名義へと変更する手続きを行います。この登記が完了して初めて、法的に不動産の所有者となり、売却する権利を得られます。

手続きは司法書士に依頼するのが一般的ですが、自分で行うことも可能です。相続登記を済ませなければ、買主が見つかっても売買契約を結ぶことができないため、必ず売却活動の前に完了させてください。

不動産会社と媒介契約を結び売却開始

相続登記が無事に完了したら、いよいよ不動産会社と「媒介契約」を結び、本格的な売却活動がスタートします。媒介契約には、「専属専任媒介」「専任媒介」「一般媒介」の3種類があり、それぞれ不動産会社の活動内容や売主側の制約が異なります。

各契約形態のメリット・デメリットをよく理解した上で、自分の希望する売却スタイルに合ったものを選びましょう。信頼できる不動産会社を選び、二人三脚で売却成功を目指していくことが大切です。

実家の売却で使える税金の特例と注意点

相続した実家を売却して利益(譲渡所得)が出た場合、その利益に対して所得税と住民税が課税されます。しかし、一定の条件を満たすことで、税金の負担を大幅に軽減できる特例制度が用意されています。これらの制度を知っているかどうかで、手元に残る金額が大きく変わってきます。

ここでは、実家の売却時にぜひ活用したい代表的な2つの税金の特例と、売却のタイミングに関する注意点を解説します。節税のためには、適用要件を正確に理解し、計画的に売却を進めることが重要です。

3000万円の特別控除が使える空き家特例

「被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例」は、通称「空き家特例」と呼ばれ、相続した空き家の売却で得た利益から最大3,000万円を控除できる非常に有利な制度です。この特例を使えば、譲渡所得が3,000万円以下であれば税金はかかりません。

ただし、適用には相続開始直前まで親が一人で住んでいたこと、売却代金が1億円以下であること、耐震基準を満たすか更地にして売却することなど、細かな要件があります。ご自身のケースが適用対象になるか、事前に専門家へ確認することをおすすめします。

取得費加算の特例で譲渡所得税を軽減

実家を相続した際に相続税を支払っている場合は、「取得費加算の特例」を利用できる可能性があります。これは、支払った相続税額の一部を、売却した不動産の取得費に上乗せできる制度です。取得費が増えることで、課税対象となる譲渡所得を圧縮し、結果的に所得税や住民税を節税できます。

この特例を適用するには、相続税の申告期限の翌日から3年以内に売却を完了させる必要があります。売却のタイミングが重要になるため、相続税を納付した方は期限を意識して売却計画を立てましょう。

相続の前と後どちらで売るべきか

実家の売却を考えたとき、「親が元気なうちに売るべきか、相続が発生した後に売るべきか」という問題に直面することがあります。どちらのタイミングで売るかによって、適用できる特例や税金の額が大きく異なるため、慎重な判断が必要です。

例えば、親が存命中に売却する場合は、居住用財産の3,000万円特別控除が使える可能性があります。一方で相続後であれば、前述の空き家特例や取得費加算の特例が選択肢に入ります。それぞれの家族の状況によって最適な答えは異なるため、税理士などの専門家に相談し、シミュレーションをしてもらうのが最善です。

まとめ:売れない実家は専門家と早期対策を

相続した実家が売れない原因は、建物の古さや立地の問題、権利関係の複雑さなど様々です。しかし、どんな理由であれ放置し続けることは、維持費の負担増や資産価値の低下といったリスクを高めるだけです。問題の先延ばしは、状況をさらに悪化させてしまうことを認識しなければなりません。

売却を成功させる鍵は、現状を正しく把握し、早期に行動を起こすことです。価格の見直しや更地化、不動産買取など、打つべき手は数多く存在します。一人で抱え込まず、相続不動産に強い不動産会社や税理士といった専門家の力を借りながら、ご自身の状況に合った最適な解決策を見つけ出しましょう。

相続した実家の売却に関するよくある質問

売れない実家の処分や対処法はありますか?

売れない実家の対処法はいくつかあります。まずは、売り出し価格が相場に見合っているかを確認し、必要であれば値下げを検討します。建物の状態が悪い場合は、解体して更地として売却したり、不動産会社による買取サービスを利用して早期に現金化する方法も有効です。

それでも買い手が見つからない場合は、自治体の空き家バンクに登録したり、近隣住民や法人への寄付を検討することもあります。最終的な手段としては、家庭裁判所で手続きを行う「相続放棄」も選択肢の一つです。

相続した実家を放置するとどうなりますか?

相続した実家を放置すると、様々なリスクが生じます。まず、固定資産税や火災保険料などの維持費が継続的にかかり、経済的な負担となります。また、家は急速に老朽化し、資産価値が大きく下落するだけでなく、害虫の発生や不法投棄など、近隣トラブルの原因にもなりかねません。

さらに、倒壊の危険などがあると自治体から「特定空家」に指定され、固定資産税が最大6倍になる可能性があります。放置は百害あって一利なしであり、できるだけ早く対策を講じることが重要です。

実家の売却はどこに相談すればいいですか?

実家の売却に関する最初の相談先としては、相続不動産の取り扱い実績が豊富な不動産会社がおすすめです。彼らは売却の専門家であると同時に、相続特有の問題にも精通しているため、的確なアドバイスが期待できます。

また、相談内容に応じて、他の専門家と連携することも大切です。例えば、相続登記については司法書士、税金の計算や特例の適用については税理士、相続人間でトラブルになっている場合は弁護士に相談すると良いでしょう。複数の専門家の視点から、最適な解決策を探ることが成功への近道です。

相続や売却にかかる税金はいくらですか?

相続や売却にかかる税金は、不動産の価値や相続人の状況によって大きく異なります。相続時には、遺産総額が基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超えた場合に「相続税」がかかります。売却時には、売却で得た利益(譲渡所得)に対して「譲渡所得税・住民税」が課税されます。

その他、登記の際には「登録免許税」、売買契約書には「印紙税」が必要です。税額は個別のケースで大きく変動するため、具体的な金額を知りたい場合は、税理士に相談して試算してもらうことを強くおすすめします。

実家の相続でやってはいけないことは何ですか?

実家の相続で避けるべきことの第一は、相続人同士での話し合いを疎かにすることです。一人の判断で話を進めたり、遺産分割協議をせずに放置したりすると、後々大きなトラブルに発展します。また、相続登記を怠ることも、売却ができないだけでなく、将来的に権利関係が複雑化する原因となります。

特に、誰も住む予定がない実家を安易に相続してしまうと、「負の資産」を抱え込むことになりかねません。「住まない実家は相続してはいけない」という視点を持ち、相続放棄も含めて慎重に検討することが、後悔しないための重要なポイントです。

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